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コミュニケーションについて、広告クリエイティブディレクターの話

ストレスを、ワクワクに。

 

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「生きていることが幸せ!」

たとえば仕事で大きな目標を立てて頑張り、見事に実現した。でも、頑張っている最中は分からなかったけれど、いざ実現してみると、それほど大したことをやり遂げたという実感が湧いてこなかったり、まわりの評価もそれほどじゃなかったりということはありませんか?必死に努力した目標が、実現してみると、幸せをもたらすものでなかったと気づくこと。

一生懸命に頑張った結果が、実現した後でたいしたものではなかったと気づく。未来に起きる事に対して自分がどう感じるのかの予測と、結果として実際に抱いた感覚のズレを「インパクトバイアス」と呼びます。

実際はそこまで幸福感をもたらさないものを手に入れるために、自分は必死になっていたのか。と気づいた時に、自尊心が傷つき、ストレスとなって落ち込んでしまう。せっかく目標を達成したのに、それによって不幸を感じてしまうという、なんという矛盾でしょうか。

そこから立ち上がろうと、人はさらに高い目標を目指すこともあるでしょう。しかし、その目標がモノだった場合は「もっともっと」となって、どこまでいったら満たされるのか保障はありません。また、経済的に満たされても、健康や人間関係などの悩みが出てくれば、今度は経済的な成功が幸福感をもたらすものには感じられなくなってしまうでしょう。

では、インパクトバイアスにさいなまれない幸福感はあるのか?それは、生きていること自体が幸福だと感じられることではないでしょうか。悩みがないという状態ではありません。むしろ、怒りや悲しみに直面しても、それを受け止めつつ、なおそこから立ち上がっていこうとするレジリエンスの力、乗り越える勇気のようなものといえるでしょう。

毎日の悩みを乗り越えていくことは、とても人間らしい状態といえます。さらに大きな悩みを乗り越えた経験を持つことで、インパクトバイアスに一喜一憂しない人生となるはずです。

心理学では、目標に向かう時の人の傾向性には「戦略的楽観主義」と「防衛的悲観主義」があると説きます。戦略的楽観主義の人は、うまくいった場合を思い描いて努力する。防衛的悲観主義の人は、失敗した場合を想定し、そうならないように努力する。

どちらも結果は出るとしても、その達成によって得られる幸福感は違うような気がします。また、防衛的悲観主義の人に、無理やり前向きになってもらうと、逆に結果につながらないこともわかっています。

話は変わりますが、「再評価」と呼ばれる方法があると聞きました。ストレスや不安を感じると心拍数が増えますが、これは興奮した時の状態と似ています。そこで、ストレスを感じている時のドキドキする感じを、ワクワクしていると自分に錯覚させるわけです。ストレスを感じている時に、あえて声に出して「今、ワクワクしてるー!」などと言ってみるとよいとのことです。何を言うのかは、人それぞれでしょう。

困難にあうたびに、それを挑戦のワクワク感に置き換えていくことを繰り返していくと、いつか自然にストレスを挑戦へのエネルギーに転換していくことができる自分になっていくのかもしれませんね。

 

筆者については・・・

 

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