クリエイティブカフェ クリカフェ

コミュニケーションについて、広告クリエイティブディレクターの話

プレゼンは語尾が決め手。「と思います」では確信は伝わらない。

f:id:cr-cafe:20210111165622j:plain

「そこは言い切らないと、ね」

マスター(以下)いらっしゃい。

わたし(以下)コーヒーください。

このまえ「プレゼンは言葉の力が大事」という話をしたよね。どんなに優れた企画でも確信を持って伝えられなければ、相手も自信を持って採用できないということだったけど。あんまり自信満々だと、偉そうとかうさんくさいと思われることはないの?

 

クリエイティブのプレゼンは実演販売とは違いますからね。プレゼンの態度は誠実でなければいけませんよ。これからパートナーとなる相手に「想いを共有してもらう」ことが大事ですから。業者としてへりくだる必要もありません。

誠実に確信を持って語らないと、相手に失礼でしょう。もちろん企画の中身がともなっていなければ話になりませんが、であればなおさら「確信が伝わる話法」がプレゼンテーターには必要です。

 

確信が伝わる話法って、例えばどんなこと?

 

分かりやすい例をひとつ言うと、「語尾をしっかり言い切る」ということでしょう。それとは逆に、確信が伝わらないのは「…と思います」というような、個人の感想に聞こえてしまう語尾ですね。

同じことを言っていても、例えば「コンセプトは『消費者と並走するコミュニケーション』です。表現は3方向あります」と言うのと、「コンセプトは『消費者と並走するコミュニケーション』だと思います。表現は3方向あると思います」では、相手への刺さり方が違うでしょう。

たまに「…と思います」と言うのはともかく、口癖のように「…と思います」を繰り返す人の話は、全体として確信が無いというか、発言の責任があいまいな印象を与えてしまいがちですね。

 

プレゼンテーターの意見を聞きたいのではなく、提案が聞きたいんだもんね。

 

意識せずに「…と思います」と言ってしまうのだとしたら損しています。そういう人は、プレゼンの時にはあえて語尾の「…と思います」を封印するよう意識した方がいいでしょう。もちろん日常会話ではまったく問題ないのですが、重要な案件についてのプレゼンでは「思います話法」は封じた方が良いでしょう。

 

話を聞いていて思い出したのが、菅総理の記者会見だね。誠実に話されているとしても、インパクトのある施策を打ち出すのに「思います話法」がちょっと多いような気がしたね。政策を批判しているわけじゃなくて、あくまで話し方についてだけど。

 

ちょっと官邸のホームページを見てみましょうか。緊急事態宣言が出た時のものを読むと、なるほど「思います」という語尾が目立ちますね。ちょっと抽出してみても・・・

 「…都会でも地方でも同じ働き方ができるように、テレワークを強力に推進したいと思います」。これは「…強力に推進してまいります」の方が良いですね。

「…20時以降の不要不急の外出の自粛をお願いしております。是非徹底していただきたいと思います」。これも「…自粛を是非徹底していただくようお願いいたします」と言い切った方が良いでしょう。

「…未来を担う子供たちの学びの機会を守りたいと思います」は、「…学びの機会を守ります」の方が強い想いが伝わります。

同様に、「…十分な資金を用意いたしました。是非皆様に使っていただきますように、手続も簡単にしたいと思います」「…特措法を改正し、罰則などにより強制力を付与することによって、より実効的な対策を可能にしたいと思います」も「…と思います」と言わずに言い切った方が良いでしょう。

また、「…大切な命を守るために御自身のことと捉えていただいて、行動をお願いしたい、このように思います」のように、「…このように思います」と付け加えると、お願いの気持ちを弱めてしまいます。

「…このように思います」は記者との質疑応答になると、ぐっと増えますね。

「…随時状況を見ながら必要な対策を採っていきたい、このように思っております。とにかく効果のある対象に徹底的な対策を講じていきたい、このように思います」と繰り返していますが、これは「…随時状況を見ながら必要な対策を採っていきます。とにかく効果のある対象に徹底的な対策を講じる決意です」と言った方が良いですね。他にも・・・

「…効果的な対応策に的を絞って行っていきたい、このように思います」

「…様々なメニューを用意しておりますので、これを活用して必要な支援というのは行っていきたい、このように思っています」

「…1か月で何としても感染拡大防止をしたい、そういう思いで取り組んでいきたい、こういうように思います」

「…対策はしっかり打っていきたい、そういう思いであります」

「…適切に対処していきたい、このように思っています」

など随所でおっしゃっています。また、

「…必要な方には検査を受けられるように行っていきたいというふうに思います」

「…こうした基本的な考え方をまずは徹底していきたいというふうに思います」

「…状況を見ながら、そこはしっかりと対応していきたいというふうに思います」

「…まずは資金繰りの支援を行っていきたいというふうに思っています」

と、「…いきたいというふうに思います」という言い回しが極めて多いですね。

「…このように思っております」「…いきたいというふうに思っています」を多用すると、丁寧さを超えて弱気なイメージを与えてしまいます。

語尾に限って言えば、せっかく施策や決意を語られていても、わざわざ「…このように思っています」と付け加えることで、結果的に自信のなさを与えてしてしまっていることは残念です。

せめて「…このように思っています」と「…というふうに思っています」を封印していただくだけでも、だいぶ印象は違ってくるはずです。

 

テレビ中継されていることを考えれば、記者会見は「国民へのプレゼン」と言えるので、その中身は当然のこととして、話し方に限っていえば特に語尾はとても大事だということだね。

 

筆者については・・・

 

f:id:cr-cafe:20200930203809p:plain