クリエイティブカフェ クリカフェ

コミュニケーションについて、広告クリエイティブディレクターの話

プレゼンは、クライアントと想いを共有するコンテンツ。

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「並走するプレゼンにしたい」

マスター(以下)コーヒーのお替りどう?

わたし(以下)あ、じゃあお願いします。

今日はパソコンじゃなくて、紙に書いてるんだね。

 

そうですね。僕はいきなりパソコンに向かうのではなく、ああでもないこうでもないと、まずA4のコピー用紙に書いていきます。

 

ノートじゃなくてコピー用紙に書いていたら、バラバラになっちゃうんじゃないの?

 

だからいいんですよ。ノートに書いていくと、その時点で一定の流れができてしまうでしょう。あとから前後を組み替えるのもめんどくさいし。いったん流れにしばられると、そこから抜け出せなくなるリスクがあるんですね。

 

それってリスクなの?課題から出発して、ある流れに沿って結論に導いていくのは、別にリスクとは思えないけどね。

 

もちろん実際に提案する企画書では、しっかりと流れを作って結論に導きますよ。でも、その企画書を書いていく過程で新たに気づくこともあるわけです。 

例えばクライアントのオリエンの中に、課題とそれを解決するソリューションの手段やメディア、メッセージの方向性などが示されていても、それをさまざまな角度から検証してみるわけです。

その課題の本質は何か?もしかしたら別の課題もあるのではないか?コミュニケーションすべき相手は誰なのか?どういうカタチで解決すればいいのか?コストに見合う解決策は?クライアントのインナーに及ぼす効果は?などなど。

 

なるほどね。オリエンをただなぞるだけじゃないと。

 

その検証を経て、クリエイティブの戦略と戦術を考えていくわけです。まずは、思いつくままに項目を書き出していきます。項目ごとに別の紙に書いていくわけです。そこに疑問や気づき、新たな視点を書き込んで更新していきます。

そして、それぞれの項目のシートを行ったり来たりしながら、時には順序を入れ替えたり破棄したりしながら思考をまとめていくわけです。

 

それでペラの紙に書いていくわけか。かなりアナログだね。

 

そうやって、けっこうぐちゃぐちゃになったものを、新しい紙に書き直しては俯瞰して見ていくわけです。結果的にオリエン通りになってることもあり、クライアントが気づいていない視点にたどり着けていたり、クリエイティブの幅が絞り込めたり、オリエンからは想像できない提案に至ることもあります。

 

それを提出用に清書していくわけ?

 

そうやってでき上がったプロットは、提案する側の思考の流れそのものなので、それをクライアントにも共有してもらえるように、その流れに沿って企画書にします。

もっとも提案の流れについては、さまざまな流儀があるでしょう。冒頭にコンセプトステートメントだけをドンと発表しておいて、やおら「なぜなら」と解き明かしていくなど、クリエイティブディレクターによってさまざまです。

中には「消費者は企画書など見ていません、できあがった表現こそが全てです」と言って、あえて表現案だけを提案する方もいます。

 

かっこいいけど、ネームバリューがないと難しいんじゃない?まあ、あなたには無理だね。

 

僕はプレゼンは結果発表の場ではなく、クライアントもいっしょに考えて、答えに至る想いを共有していく場であると思っています。いわば「並走するプレゼン」を心がけています。「いっしょに考えた結論をもとに、いっしょに作っていきましょう」という想いです。

「パートナー」なのか「偉そうな業者」なのか、この違いはクライアントと長く付き合っていく上で大きいですよ。

 

「想いを伝える」という意味では、手書きの企画書なんてどう?

 

いまどき手書きも味があって新鮮ですね。そういえば先輩のクリエイティブディレクターで、毛筆で企画書を書いていた方がいました。今は古代文字の書道家として活躍していらっしゃいます。

また、プレゼンに先立ってクライアントへのお手紙を読むという人もいましたね。うやうやしく取り出して。プレゼンテーターのキャラクターによっては、ありですね。

手書き企画書もお手紙を読むのも、リモートプレゼンでは斬新かもしれません。「クールなプレゼンだからこそ人肌の温もりを」という感じで。

 

なんとなくスベりそうな気もするけど。普通はパソコンでまとめるんでしょ?

 

キーノートでもパワーポイントでもいいのですが、クライアントはウィンドウズが主流なので、パワポが一般的でしょう。そして企画書のテキストも、より魅力的にコピーライティングしていきます。

レイアウトはもちろんですが、フォントの選択も重要です。ボールドのゴシック系フォントとイメージ写真で隙間なく埋める人もいますし、ナイーブなフォントでホワイトスペースを活かす人も。コピーライター、デザイナー、プランナーなど、職種によってもスタイルはさまざまです。

ただしプレゼンの後も企画書が独り歩きすることを前提に、プレゼンの場にいなかった人が読んでも分かりやすく、共感できるように作り込むことに気を配ります。それはリモートでのプレゼンが増えていくほど、ますます重要になっていくと感じますね。

 

筆者については・・・

 

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